
2026年6月「口腔機能管理料」再編を収益に変える実務ガイド――口機能1・2の算定シミュレーション完全版
2026年6月施行の歯科診療報酬改定で、口腔機能管理料が口機能1(90点)・口機能2(50点)の2段階に再編、施設基準も廃止されます。さらにDH口腔機能実地指導料(46点)が新設され、月間100名規模で年間+79万円の増収余地が生まれます。本記事では患者分類フロー・算定シミュレーション・体制整備の優先順位までを実務目線で解説します。
- ◆2026年6月施行で口腔機能管理料が口機能1(90点・検査実施)/口機能2(50点・検査不要)の2段階に再編、施設基準も廃止
- ◆口腔機能実地指導料(46点・月1回)が独立新設。研修受講DH配置・文書提供・処遇改善が要件で経過措置は2027年5月まで
- ◆月100名フル算定で年間+79万円、月500名で年間+396万円の増収余地。口機能2ルートでも+26点/人と十分なインパクト
- ◆C001-7・歯科口腔リハ料3との併算定不可など落とし穴を月次運用ルールに組み込む必要あり
- ◆優先順位はDH研修受講→処遇改善規程→検査機器導入→月次KPIモニタリングの順で90〜180日以内に整備
2026年6月改定の全体像:口機能1・2の2段階化と施設基準廃止
2026年(令和8年)6月1日から、歯科診療報酬が改定されます。令和8・9年度の2年度平均本体改定率は+3.09%(令和8年度+2.41%、令和9年度+3.77%)と30年ぶりの高水準です。中でも経営インパクトが大きいのが「口腔機能に関する管理評価の充実」で、口腔機能管理料の2段階化・施設基準廃止・DH指導料の独立新設という3点セットで現場の算定機会が大きく広がります。
具体的には、これまで一律60点だった口腔機能管理料が、検査を実施した患者向けの口機能1(90点)と、検査未実施でも算定可能な口機能2(50点)に分化しました。同時に口機能検査関連の施設基準が廃止され、より広範な歯科診療所での算定が可能になっています。さらに、従来は歯科衛生実地指導料の加算(12点)にすぎなかった口腔機能指導が、口腔機能実地指導料(46点)として独立新設されました。
一方で歯科疾患管理料(歯管)は100点→90点に引き下げ(初診月の80/100減算は廃止し一律90点に統一)となるため、口腔機能管理料を併算定しない医院は実質的な減収になります。「算定するか否か」ではなく「いかに体制整備して算定機会を取り切るか」が、改定後の収益を左右する分岐点です。

口機能1(90点)vs 口機能2(50点)の患者分類フロー
新しい口腔機能管理料の最大のポイントは、検査実施の有無と検査項目で点数が分かれることです。口機能1(90点)は、口腔機能低下症患者に対し、口腔細菌定量検査・咀嚼能力検査・咬合圧検査・口腔粘膜湿潤度検査・舌圧検査のいずれか1つ以上を実施した場合に算定します。一方の口機能2(50点)は検査未実施でも算定可能で、これまで検査機器を持たないために算定を諦めていた医院でも管理料を取れるようになりました。
運用設計の観点では、まず初診〜再評価時に検査を組み込み、口機能1で算定するルートを基本線にしつつ、検査が難しい高齢患者・在宅患者では口機能2で月次フォローを継続するという二層構造が現実的です。小児領域でも同様に小機能1(90点)・小機能2(50点)の2区分に再編され、3項目以上該当で小機能1、2項目該当で小機能2となります。NDBデータ(令和5年5月時点)では、口腔機能発達不全症の病名がついていながら歯管のみ算定が約13万件に対し、小児口腔機能管理料の算定はわずか約7,000件と、算定ギャップが極めて大きいことが指摘されています。

DH口腔機能実地指導料(46点)の新設と算定条件
2026年改定でとくに見落とせないのが、口腔機能実地指導料の独立新設です。改定前は歯科衛生実地指導料の口腔機能指導加算として12点でしたが、改定後は独立した点数として46点(月1回)に格上げされました。算定条件は次のとおりです。
- 口腔機能発達不全症・口腔機能低下症の実地指導に係る適切な研修を受けた歯科衛生士が1名以上配置されていること
- 歯科医師の指示を受け、歯科衛生士が口腔機能に係る指導を行い、文書提供したこと
- 指導を行う歯科衛生士の処遇改善に係る取組を行っていること(施設基準)
- 施設基準には2027年5月31日までの経過措置あり
注意点として、在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料(C001-7)を算定した月は併算定不可、歯科口腔リハビリテーション料3と指導内容が重複する場合も算定不可です。在宅・施設療養患者を多く抱える医院ほど、月次の算定設計を事前に整理しておく必要があります。「適切な研修」は、歯科医師または歯科衛生士を主体とする団体・学会等が主催する、口腔機能発達不全症および口腔機能低下症の概要・検査法・訓練法・実地指導方法等(在宅対応含む)の研修を指します。
月次患者数別シミュレーション:100名〜500名の増収シナリオ
体制整備の前に、自院のインパクトを定量化しましょう。改定前のフルセット算定は「歯管100点+口腔機能管理60点=160点」、改定後のフルセットは「歯管90点+口機能1 90点+口腔機能実地指導46点=226点」です。1人あたり+66点(660円)の増収となり、月間対象患者数に応じて以下の規模になります。

注意したいのは、口腔機能管理料を算定しない場合、歯管が-10点となるため純減になるという点です。たとえば月100名の対象患者がいて何も体制を変えなければ、年間で約12万円のマイナス。一方、口機能2(50点)+ 実地指導46点だけでも算定できれば、改定前の歯管100点+口機能60点=160点に対し、改定後は歯管90点+口機能2 50点+実地指導46点=186点と、+26点/人の増収に転じます。「検査機器がないから無理」と諦めず、まずは口機能2ルートから入ることが現実的な打ち手です。
既存診療との組み合わせ時の落とし穴と対策
算定要件を満たしていても、運用上の落とし穴で査定・返戻されるケースが想定されます。改定対応の社内勉強会では、最低限以下の4点をチェックリスト化してください。
- C001-7との併算定不可:在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料を算定した月は口腔機能実地指導料を算定できません。在宅・訪問診療の多い医院は月初の患者管理で振り分けを明確化。
- 歯科口腔リハビリテーション料3との重複:同日算定で指導・訓練内容が重なる場合は不可。レセコン上の同日チェックロジックを更新。
- 文書提供の証跡管理:実地指導料は文書提供が要件。指導内容・提供日付・患者控えの保管をルール化。
- 研修修了DHの配置証跡:「適切な研修」の修了証コピーを院内に保管。2027年5月までの経過措置中に複数人の修了体制を整える。
また、口腔機能管理を継続するうえでは予約・リコール導線の設計も重要です。月1回算定の管理料を取り切るには、リコール率と予約消化率のモニタリングが前提になります。リコール導線をデジタル化したい医院は、2026年版 歯科医院×LINE公式アカウント実務ガイドもあわせてご確認ください。
施設基準廃止で広がる算定機会:体制整備の優先順位
口腔機能管理料の施設基準が廃止されたことで、ほぼすべての歯科診療所で口機能1・2の算定が可能になりました。一方、口腔機能実地指導料には施設基準が設けられているため、ここに体制整備の焦点を当てるべきです。優先順位は次のとおりです。
- 【第1優先・90日以内】 既存歯科衛生士1名以上を「適切な研修」に参加させる。学会・団体主催の研修を確保し、修了証を院内保管。
- 【第2優先・90日以内】 DHの処遇改善取組を就業規則・賃金規程に明文化(実地指導料の施設基準)。
- 【第3優先・180日以内】 口機能1ルートを取るための検査機器(舌圧計・咬合圧計・口腔水分計など)のいずれかを導入。投資判断は機器投資のROIフレームワークと同じく、回収期間・月次稼働を試算してから決める。
- 【第4優先・継続】 月次会議で「口腔機能管理算定率」「実地指導料算定率」「リコール率」をKPIとしてモニタリング。
2026年6月は単なる点数改定ではなく、政策的に「管理型歯科への転換」を促す節目です。施設基準廃止という追い風を活かし、検査・指導・管理の3点セットを月次運用に組み込めるかどうかで、向こう3年の収益力に大きな差が出ます。改定前の準備期間(〜2026年5月)を有効に使い、研修・規程整備・KPI設計まで一気に仕上げきりましょう。
よくある質問
- Q. 口機能2(50点)は本当に検査機器なしで算定できますか?
- はい、口腔機能低下症の診断が前提となりますが、口機能2は5検査(口腔細菌定量・咀嚼能力・咬合圧・口腔粘膜湿潤度・舌圧)のいずれも実施しなくても月1回50点の算定が可能です。施設基準も廃止されたため、検査機器を持たない医院でもまず口機能2ルートで算定を開始し、段階的に検査機器を導入して口機能1(90点)へ移行する戦略が現実的です。
- Q. 口腔機能実地指導料の『適切な研修』とは具体的にどのような研修ですか?
- 歯科医師または歯科衛生士を主体とする団体・学会等が主催する研修で、口腔機能発達不全症および口腔機能低下症の概要・検査法・訓練法・実地指導方法(入院・在宅・施設療養患者への対応を含む)に係る内容を扱うものを指します。修了証を院内に保管し、施設基準として歯科衛生士の処遇改善取組も併せて整備する必要があります。施設基準の経過措置は2027年5月31日までです。
- Q. 改定後、口腔機能管理料を算定しない医院はどれくらい減収になりますか?
- 歯科疾患管理料が100点→90点に引き下げられるため、何も対応しない場合は1人あたり-10点(-100円)の純減です。月間100名の歯管算定対象患者がいる医院では、年間で約12万円のマイナス。一方、口機能2(50点)+口腔機能実地指導料(46点)を併算定できれば+96点/人となり、年間で約115万円のプラスに転じます。算定するかしないかで年間120万円超の差がつく計算です。
- Q. 在宅診療が多いのですが、口腔機能実地指導料はどう運用すべきですか?
- 在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料(C001-7)を算定した月は口腔機能実地指導料を併算定できません(C001-7注5)。また、歯科口腔リハビリテーション料3と指導内容が重複する場合も同日算定不可です。在宅・訪問診療が多い医院では、月初の患者管理時にどの管理料・指導料を算定するかを振り分け、レセコンの同日チェックロジックを改定対応版に更新しておくことを推奨します。
