
小児口腔機能管理料の算定ガイド【2026年改定】小機能1・2の判定基準と運用設計
小児口腔機能管理料の実務ガイドです。NDBデータでは口腔機能発達不全症の病名がありながら管理料が算定されていないケースが約13万件と指摘されており、小児は「やっているのに算定していない」ギャップが最も大きい領域です。診断基準(「食べる機能」「話す機能」2項目以上該当・食べる機能の指定項目を含む)、該当項目数で決まる小機能1(90点)・小機能2(50点)の判定、検査実施の有無で区分される成人との違い、リコールや矯正相談に評価を組み込む運用設計、管理終了・中止(12か月後)のルールまで整理しています。
- ◆NDBデータでは病名あり約13万件に対し小児口腔機能管理料の算定は約7,000件。小児は「管理しているのに算定していない」ギャップが最も大きい領域です。
- ◆口腔機能発達不全症の診断は、チェックリストの「食べる機能」「話す機能」で2項目以上該当し、うち1項目以上が食べる機能の指定項目であることが基準です。
- ◆小機能1(90点)は3項目以上該当、小機能2(50点)は2項目該当。成人と違い検査の有無ではなく該当項目数で区分が決まります。
- ◆リコールの問診にチェックリストを統合し、矯正相談で見つかる口呼吸・舌癖を評価につなげる導線設計が算定の入口です。
- ◆管理終了(治癒)・中止の目安は12か月後、再開は6か月後。病名・算定の突合リストを毎月出力すれば算定漏れを発見できます。
小児の口腔機能管理が2026年改定の焦点である理由
NDBデータ(令和5年5月時点)では、口腔機能発達不全症の病名がありながら歯科疾患管理料(歯管)のみ算定されているケースが約13万件に対し、小児口腔機能管理料の算定は約7,000件にとどまると指摘されています(出典:東京歯科保険医新聞 第672号・2026年3月1日)。つまり、病名を付けて実際に管理まで行っているのに、点数に反映できていない医院が大多数という構図です。小児の口腔機能管理は、歯科の保険点数の中でも「やっているのに算定していない」ギャップが最も大きい領域といえます。

2026年(令和8年)6月の改定で、小児口腔機能管理料は該当項目数に応じた小機能1(90点)・小機能2(50点)の2区分に再編されました。同時に歯管が100点から90点へ引き下げられたため、口腔機能管理料を併算定しない医院は実質減収になります(出典:厚生労働省 令和8年度診療報酬改定・2026年3月5日告示)。本記事では、口腔機能発達不全症の診断の枠組みから小機能1・2の判定、矯正・小児歯科医院での運用設計までを整理します。
口腔機能発達不全症とは——診断の枠組みを正しく押さえる
口腔機能発達不全症は、「食べる機能」「話す機能」「その他の機能」が十分に発達していないか正常に機能獲得ができておらず、明らかな摂食機能障害の原因疾患がなく、口腔機能の定型発達に専門的関与が必要な状態を指します。咀嚼や嚥下がうまくできない、構音の異常、口呼吸などがみられますが、患者本人に自覚症状があまりない場合も多いのが特徴です(出典:日本歯科医学会「口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方」令和6年3月)。対象は概ね17歳までとされています。
診断はチェックリスト(離乳完了前・離乳完了後の2種類)で行います。「食べる機能」「話す機能」の項目に2つ以上該当し、うち1項目以上が「食べる機能」の指定項目(離乳完了前はC-1〜C-9、離乳完了後はC-1〜C-6)を含むことが診断基準です(出典:日本歯科医学会・同資料)。自覚症状が乏しい疾患なので、保護者の主訴を待っていても患者は現れません。定期健診やう蝕治療で来院した小児に対し、チェックリストでスクリーニングする体制を作ることが管理の入口になります。
小機能1(90点)・小機能2(50点)の判定チェック
2026年改定後の小児口腔機能管理料は、チェックリストの該当項目数で区分が決まります。

- □ 小機能1(90点):評価項目に3項目以上該当している。
- □ 小機能2(50点):評価項目に2項目該当している(診断基準ちょうどのケース)。
- □ 必須項目の確認:該当項目に「食べる機能」の指定項目が1つ以上含まれている。
ここで注意したいのが、成人の口機能1・2との区分ルールの違いです。成人(口腔機能低下症)は「検査を実施したか」で口機能1(90点)と口機能2(50点)が分かれますが、小児は該当項目数で分かれます。「検査機器がないから小機能2」という判定は誤りで、3項目以上該当していれば検査機器の有無にかかわらず小機能1を算定できます。区分ごとの要件の全体像は口腔機能管理料の算定要件チェックリストで確認できます。
なお、口唇閉鎖力検査や舌圧検査は診断の補助と経過評価に有効です。小児は年齢とともに機能を獲得していくため、年齢・性別ごとの標準値と比較して成長曲線の中で評価します(出典:日本歯科医学会・同資料)。検査値の推移は保護者への説明材料になり、管理継続のモチベーション維持にも役立ちます。
矯正・小児歯科医院の運用設計
小児患者の多い医院で管理料算定を軌道に乗せるポイントは、既存の患者接点に評価を組み込むことです。
- ① リコールへの組み込み:定期健診の問診にチェックリスト項目を統合し、該当が疑われる小児は歯科医師が評価。診断がつけば管理計画を立案し、保護者に説明・同意のうえ管理を開始します。管理中は顔貌・口腔周囲の写真撮影を初回時と少なくとも3か月毎に行い、検査は必要に応じて3か月に1回のペースで実施します(出典:日本歯科医学会・同資料)。
- ② 矯正相談からの導線:口呼吸・舌癖・構音の問題は矯正相談で見つかることが多く、口腔機能発達不全症の評価と保険での管理は矯正治療(自費)と並走できます。ただし保険と自費の区分・説明同意の設計を誤るとトラブルの元です。詳しくは小児の口腔機能発達不全症——保険診療と自由診療の区分・説明同意の実務ガイドで解説しています。
- ③ 実地指導料との組み合わせ:研修修了歯科衛生士を配置し施設基準を満たせば、口腔機能実地指導料(46点・月1回)を管理料に上乗せできます。MFTなどの指導・訓練を担う歯科衛生士の体制づくりは口腔機能実地指導料(46点)完全ガイドをご覧ください。
算定漏れを防ぐ月次オペレーション
冒頭のNDBギャップ(病名あり約13万件 vs 算定約7,000件)は、そのまま自院の点検方法を示しています。「口腔機能発達不全症の病名あり×小児口腔機能管理料の算定なし」の患者リストを毎月レセコンから出力し、突合する——これだけで算定漏れ候補が特定できます。突合リストの運用を含むレセプト点検の全体像は口腔機能管理料の返戻・算定漏れ防止5パターンで解説しています。

あわせて、管理の「終わり方」もルール化しておきます。指導・訓練を行っても改善が少ない場合は管理計画の再立案または中止を判断し、管理終了(治癒)・中止の目安は12か月後、再開は6か月後とされています(出典:日本歯科医学会・同資料)。漫然と続けるのではなく、評価→計画見直しのサイクルを回すことが、審査対応の面でも保護者への説明の面でも重要です。
小児の管理料算定は、1人あたりの点数は大きくありませんが、リコール率の高い小児患者基盤を持つ医院ほど積み上げ効果が出ます。自院の患者数でどの程度の増収になるかは口腔機能管理料の算定シミュレーションで試算できます。
よくある質問
- Q. 口腔機能発達不全症はどうやって診断しますか?
- 離乳完了前・離乳完了後の2種類のチェックリストを用い、「食べる機能」「話す機能」の項目に2つ以上該当し、うち1項目以上が「食べる機能」の指定項目(離乳完了前はC-1〜C-9、離乳完了後はC-1〜C-6)を含む場合に口腔機能発達不全症と診断します(出典:日本歯科医学会「口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方」令和6年3月)。対象は概ね17歳までとされています。
- Q. 小機能1と小機能2はどう分かれますか?
- チェックリストの該当項目数で決まります。3項目以上該当なら小機能1(90点)、2項目該当なら小機能2(50点)です(出典:厚生労働省 令和8年度診療報酬改定)。検査の実施有無で口機能1・2が分かれる成人とは区分ルールが異なる点に注意してください。
- Q. 検査機器がなくても小機能1を算定できますか?
- できます。小児の区分は該当項目数で決まるため、3項目以上該当していれば検査機器の有無にかかわらず小機能1の対象です。ただし口唇閉鎖力検査や舌圧検査は、年齢別の標準値と比較して発達の程度を評価でき、保護者への説明や管理継続の動機づけに有効なため、導入する価値はあります。
- Q. 小児口腔機能管理料は何歳まで算定できますか?
- 口腔機能発達不全症の管理対象は概ね17歳までとされています(出典:日本歯科医学会「口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方」令和6年3月)。乳幼児期は離乳完了前チェックリスト、それ以降は離乳完了後チェックリストで評価し、成長段階に応じて管理内容を見直します。
- Q. 矯正治療中の小児でも保険の口腔機能管理はできますか?
- 口腔機能発達不全症の診断がつけば、保険での口腔機能管理と自費の矯正治療は並走し得ます。ただし、保険診療と自由診療の区分を明確にし、管理計画と矯正治療の内容・費用を分けて説明・同意を取る設計が前提です。区分が曖昧なまま運用すると混合診療の疑義や患者トラブルにつながるため、院内の説明フローを先に整備してください。


