
歯科 診療報酬改定 2026 完全ガイド
2026年6月の歯科診療報酬改定を、点数の羅列ではなく「経営にどう効くか」で整理した完全ガイドです。増収・体制整備・コスト/リスクの3軸で主要項目を俯瞰し、口腔機能管理料の2段階化や電子的歯科診療情報連携体制整備加算などを出典付きで解説。自院が何から手をつけるべきか、優先順位の決め方まで示します。
- ◆本体改定率は2年度平均でプラス3.09%。増点と新設項目が多く、対応次第で収益差が開きます。
- ◆口腔機能管理料が口機能1(90点)と口機能2(50点)に分化し、検査の施設基準も撤廃され算定の入口が広がりました。
- ◆口腔機能実地指導料(46点・月1回)が独立新設。研修受講と歯科衛生士の配置・処遇改善が要件です。
- ◆電子的歯科診療情報連携体制整備加算が新設。初診は加算1=9点/加算2=4点、再診は2点で、マイナ保険証利用率30%等の体制整備が前提です。
- ◆着手順は「増収ポテンシャル×対応コスト」で判断。未確定の点数は告示確定後に運用へ反映します。
2026年6月改定の全体像 ― 歯科経営に効く3つの軸
2026年(令和8年)6月1日から、歯科診療報酬が改定されます。本記事は、改定項目を「経営にどう効くか」という視点で整理し、自院が何から手をつけるべきかを判断できる完全ガイドです。点数や要件は厚生労働省の一次情報を中心に出典を明記し、最終確認が必要な数値には印を付けて、誤った対応を防ぎます。
今回の本体改定率は、令和8・9年度の2年度平均でプラス3.09%(令和8年度+2.41%、令和9年度+3.77%)です(出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】」)。賃上げ・物価対応を含む高水準の改定であり、増点と新設項目が多い一方で、対応を怠ると算定を取りこぼすリスクも同居しています。
本記事の点数は、厚生労働省の概要資料と告示本体(厚生労働省告示第69号)で確定している数値を記載しています。ただし制度運用の最終判断は一次情報が基準となるため、自院の運用へ反映する前には、告示本体および施設基準通知で最終突合することをおすすめします。
本記事では、改定項目を3つのレンズで束ねて解説します。増収系は算定機会が広がる項目、体制整備系は届出や運用の整備で差がつく項目、コスト・リスク系は見落とすと取りこぼす項目です。まず全体像を1枚で掴むため、主要項目の新旧対照と経営インパクト分類を次の図にまとめます。

【増収系】算定機会が広がる改定
2026年改定で最も経営インパクトが大きいのが、口腔機能管理の再編です。算定のハードルが下がり、これまで取りこぼしていた管理料を取り切れる体制づくりが、増収の鍵になります。
口腔機能管理料の2段階化と施設基準の廃止
これまで一律60点だった口腔機能管理料が、検査を実施した患者向けの口機能1(90点)と、検査未実施でも算定できる口機能2(50点)に分化しました(出典:口腔機能管理料の算定シミュレーション、および厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】」)。口機能1は、口腔細菌定量検査・咀嚼能力検査・咬合圧検査・口腔粘膜湿潤度検査・舌圧検査のいずれか1つ以上を実施した場合に算定します。
あわせて、これらの検査に関する施設基準が撤廃されました(出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】」)。検査機器を持たないために算定を諦めていた医院でも、口機能2で月次の口腔機能管理を始められます。算定の入口が広がった点が、今回の最大の増収ポイントです。具体的な点数比較や月次の増収シミュレーションは、口機能1/2の点数差と月次増収の試算で詳しく解説しています。
口腔機能実地指導料(46点)の独立新設
従来は歯科衛生実地指導料の加算(12点)にすぎなかった口腔機能指導が、口腔機能実地指導料(46点・月1回)として独立新設されました(出典:口腔機能実地指導料の算定条件と運用設計)。算定には、適切な研修を受けた歯科衛生士の1名以上配置、歯科医師の指示による指導と文書提供、歯科衛生士の処遇改善の取組(施設基準)が求められます。施設基準には2027年5月31日までの経過措置があります。
注意点として、在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料(C001-7)を算定した月は併算定できず、歯科口腔リハビリテーション料3と指導内容が重複する場合も算定できません。在宅・施設療養の患者を多く診る医院ほど、月次の算定設計を事前に整理しておくことが大切です。
小児口腔機能と医科歯科連携の増点
小児口腔機能管理料も、評価項目3項目以上該当の小機能1(90点)と、2項目該当の小機能2(50点)の2区分に再編され、対象患者の範囲も拡大しました(出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】」)。小児領域は算定ギャップが大きく、体制を整えれば増収余地の見込める分野です。
医科歯科連携では、糖尿病主病患者への連携を評価する歯科医療機関連携強化加算(60点・年1回)が新設されました(出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】」、概要資料で確定/告示で最終突合)。障害者歯科を専門に担う機関向けには、歯科疾患管理料に加算する特別管理加算(80点)も新設されています(出典:同概要、施設基準あり。概要資料で確定/告示で最終突合)。
【体制整備系】対応で差がつく改定
増収系が「算定機会の拡大」なら、体制整備系は「届出や運用の整備で差がつく」項目です。すぐには増収につながらなくても、整備の遅れがそのまま機会損失になります。早めの着手が要です。
電子的歯科診療情報連携体制整備加算(初診 加算1=9点/加算2=4点、再診2点)
医療情報取得加算・医療DX推進体制整備加算の見直しに伴い、電子的歯科診療情報連携体制整備加算が新設されました。点数は区分で異なり、初診料の加算は加算1=9点/加算2=4点、再診料の加算は2点です(出典:厚生労働省告示第69号)。マイナ保険証の利用実績を軸に評価する体系への移行です。
初診の加算1と加算2は満たすべき施設基準の範囲が異なります。加算1は施設基準(1)〜(7)に加えて(8)〜(10)のいずれかを満たす場合、加算2は(1)〜(7)を満たす場合に算定します。主な施設基準は、マイナ保険証の利用率30%以上、オンライン請求、明細書の無償交付、オンライン資格確認で取得した情報を診察室等で閲覧・活用できる体制、マイナポータルの医療情報に基づく健康相談体制、院内掲示とウェブ掲載などです(出典:厚生労働省告示第69号)。初診時に手厚い体制要件を満たせば加算1で9点を取れる一方、再診は一律2点である点を、算定設計に織り込んでおきましょう。
歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の引き上げ
賃上げ対応として、ベースアップ評価料(Ⅰ)が令和8年度から令和9年度にかけて段階的に引き上げられます(出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】」)。初診時は21点→31点、再診時等は4点→6点、歯科訪問診療時(同一建物以外)は66点→107点、(同一建物)は11点→21点と推移します(いずれも左が令和8年度、右が令和9年度の段階)。スタッフの処遇改善と算定漏れ防止のため、届出の整備を確認しておきましょう。
施設基準の簡素化(検査施設基準の撤廃・定例報告の廃止)
事務負担を軽くする方向の見直しも進みます。前述の口腔機能検査の施設基準が撤廃されたほか、定例報告の一部(在支診1・2及び病院、外感染2・4 等)が廃止され、届出様式が簡素化されました(出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】」)。届出の手間が減る一方で、最新様式での再確認は必要です。
なお、か強診から移行した口管強(口腔管理体制強化加算)の施設基準は、2026年改定では名称変更に伴う文言修正が中心で、回数要件などの各基準はほぼ変更ありません(出典:保医発0305第8号)。主な回数要件は、過去1年間で「歯周病継続支援治療30回以上」「エナメル質初期う蝕管理料+根面う蝕管理料 計12回以上」「歯科疾患管理料(口腔機能発達不全症・口腔機能低下症)等 計12回以上」「歯科訪問診療等 計5回以上」、加えて研修を修了した歯科医師1名以上の在籍です。経過措置は令和9年5月31日までとなっています。具体的な回数閾値は、運用反映の前に施設基準通知(一次通知)のPDFで最終目視突合することをおすすめします。

【コスト・リスク系】見落とすと取りこぼす改定
最後のレンズは、見落とすと算定の取りこぼしや返戻につながる項目です。名称変更や統合に伴って算定の組み替えが必要になる箇所を、確実に押さえておきましょう。
改定率と全体の方向性
改定率は本体プラス3.09%(2年度平均)で、各科改定率のうち歯科は+0.31%です(出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】」)。物価上昇への段階対応として、基本診療料等に併せて算定できる歯科外来物価対応料も新設されました(初診時 令和8年度3点/令和9年度6点、再診時等 令和8年度1点/令和9年度2点。出典:同概要)。増点の恩恵を受けるには、対応する算定要件と届出を満たしているかの点検が前提になります。
歯周病SPTから「歯周病継続支援治療」への統合・改称
歯周病安定期治療(SPT)と歯周病重症化予防治療(P重防)が統合され、「歯周病継続支援治療」へ改称されます(出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】」)。統合後の点数は歯数区分の3区分で、1(1歯以上10歯未満)=170点/2(10歯以上20歯未満)=200点/3(20歯以上)=350点です(出典:厚生労働省告示第69号、概要【歯科】)。あわせて、注3として口管強の届出医療機関には120点の加算、注4として重症化予防連携強化加算100点が設定されています。算定名目が変わるため、レセプト運用とレセコン設定の組み替えを早めに準備しておきましょう。
関連して、糖尿病患者の歯周病継続治療を推進する観点から、従来の歯周病ハイリスク患者加算(現行80点)が重症化予防連携強化加算(100点)へ見直され、医科の主治医への情報提供が要件に加わりました(出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】」、概要資料で確定/告示で最終突合)。医科歯科連携の運用フローを整えておくことが、加算取得の前提になります。
告示で確定した主な点数項目
告示第69号の確認により、これまで未確定としていた点数も整理できました。歯科疾患管理料(歯管)は90点へ統一され、初診月の減算(80%)は廃止されます(出典:概要【歯科】、告示第69号。数値は信頼できる二次情報で補完)。長期管理加算は、イ(口管強の届出医療機関)=120点/ロ=100点で、2026年改定での点数変更はありません(出典:告示第69号)。有床義歯管理は装置単位化に伴い、新製有床義歯管理料(1装置)が局部140点・総義歯140点、歯科口腔リハビリテーション料1(1口腔)の有床義歯が114点となります(出典:告示第69号、概要【歯科】)。外来安全対策加算(外安全)・外来感染対策(外感染)は、2026年改定での点数変更はなく、定例報告の一部廃止による簡素化にとどまります(出典:告示第69号)。
自院は何から手をつけるか ― 優先順位の決め方
項目が多いと、何から着手すべきか迷いがちです。判断軸はシンプルで、「増収ポテンシャル」×「対応コスト」の2つで優先順位を決めます。増収が大きく対応コストが低い項目から着手するのが基本線です。
具体的な手順は次のとおりです。まず自院の患者構成から、各項目で取れる算定回数を概算します。次に、必要な研修・届出・運用変更にかかる手間を見積もります。最後に、両者を掛け合わせて着手順を決めます。月次の患者数で試算すると、優先順位の判断がぶれません。優先順位づけの考え方は、クリニックの仕組み化とKPI設計もあわせてご覧ください。

まとめ:改定を"対応"でなく"成長"に変える
2026年改定の要点を、最後に3点へ集約します。第一に、口腔機能管理の再編で算定の入口が広がり、増収の機会が拡大しました。第二に、電子的歯科診療情報連携体制整備加算やベースアップ評価料など、体制整備の遅れがそのまま機会損失になる項目があります。第三に、SPTの統合・改称をはじめ、算定の組み替えを怠ると取りこぼすリスクがあります。
改定を単なる「対応」で終わらせるか、「成長」の起点にできるかは、自院の数字で試算し、優先順位をつけて動けるかにかかっています。本記事の3軸と行動チェックリストを使い、自院の患者構成に当てはめて試算するところから始めてみてください。点数は告示第69号で確定済みですが、運用反映の前には告示本体での最終突合をおすすめします。
よくある質問
- Q. 2026年度の歯科診療報酬改定はいつから始まりますか?
- 2026年(令和8年)6月1日から施行されます。本体改定率は令和8・9年度の2年度平均でプラス3.09%(令和8年度+2.41%、令和9年度+3.77%)で、賃上げ・物価対応を含む高水準の改定です(出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】」)。
- Q. 2026改定の主な変更点は何ですか?
- 口腔機能管理料の2段階化(口機能1=90点/口機能2=50点)と検査の施設基準撤廃、口腔機能実地指導料(46点)の独立新設、電子的歯科診療情報連携体制整備加算(初診 加算1=9点/加算2=4点、再診2点)の新設、ベースアップ評価料の段階的引き上げ、歯周病安定期治療(SPT)の「歯周病継続支援治療」への統合・改称などが中心です。なお、口腔管理体制強化加算(旧か強診)への移行や外来環の再編は前回の令和6年改定で実施済みで、2026改定の新トピックではありません。
- Q. 電子的歯科診療情報連携体制整備加算(医療DX関連)とは何ですか?
- 医療情報取得加算・医療DX推進体制整備加算の見直しに伴い新設された加算です。点数は区分で異なり、初診料の加算は加算1=9点/加算2=4点、再診料の加算は2点です。マイナ保険証の利用率30%以上、オンライン請求、明細書の無償交付、オンライン資格確認で取得した情報を診察室等で活用できる体制などが主な施設基準で、加算1はさらに上乗せの体制要件を満たす必要があります(出典:厚生労働省告示第69号)。
- Q. 改定対応は何から着手すべきですか?
- 「増収ポテンシャル×対応コスト」の2軸で優先順位を決めるのが基本です。まず自院の患者構成から各項目の算定回数を概算し、研修・届出・運用変更の手間を見積もって掛け合わせ、着手順を決めます。増収が大きく対応コストが低い口腔機能管理から着手し、体制整備系は機会損失を避けるため早めに整えるのが現実的です。
