ARXIADENTAL GROWTH OS
採用・リクルーティング|歯科衛生士 採用面接 設計の教科書

歯科衛生士 採用面接 設計の実務ガイド――潜在DH・第二新卒・中途に向き合う面接フローの考え方

求人を出しても応募が来ない、面接まで進んでも辞退される――その原因の多くは「面接を見極めの場と捉えている」ことにあります。新卒求人倍率23.7倍という超売り手市場では、面接は医院が求職者に「選ばれる」双方向の動機づけの場です。本記事では潜在DH・ブランク者・第二新卒のタイプ別質問設計、医院価値の伝え方、当日オファーまでの実務フレームを公的データに基づき解説します。

  • 歯科衛生士は免許登録約30万人に対し就業約15万人で、約16万人の潜在DHが存在する構造的人材ギャップがある
  • 新卒求人倍率23.7倍の売り手市場では、面接は『見極め』ではなく『双方向の動機づけ』の場として設計する
  • 転職理由トップは『経営者との人間関係』31.5%。離職要因の院長と衛生士の認識ギャップを面接で開示することが信頼構築の鍵
  • 潜在DH・ブランク者には技術不安を解消する研修体制提示、第二新卒には問題解決力を問う質問設計が有効
  • 23.7倍の競争下では当日オファー+内定後フォローで辞退を防ぎ、KPI(承諾率・定着率)で運用改善する

【PR・広告を含みます】本記事は統計・制度の解説に加え、末尾に株式会社ARXIAのサービス案内(広告)を含みます。労務・法令に関する記述は一般的な解説であり、実務上の判断は社会保険労務士等の専門家にご確認ください。

歯科衛生士採用の現実――累積免許登録者を母数にした就業割合46.6%という構造

「求人を出しても応募が来ない」「面接に進んでも内定辞退される」――この悩みの背景には、人材確保の構造的な難しさがあります。厚生労働省「歯科衛生士の業務のあり方等に関する検討会」資料(令和7年7月30日)によれば、令和6年の歯科衛生士免許登録者数は321,241人、就業歯科衛生士数は149,579人で、免許登録者数のうち就業者の割合(就業割合)は46.6%とされています。ただしこの「就業割合」は、過去から累積した免許登録者数を母数とした比率です。母数には死亡・高齢・他職種就業などが含まれ得るため、就業していない人がそのまま復職可能な「潜在歯科衛生士」になるわけではない点に注意が必要です。同検討会資料では、再就業可能な歯科衛生士数は49,118人と推計されています。これは年齢などから「復職の可能性がある」とした推計値であり、就業希望の有無や復職時期を統制したものではないため、いますぐ採用可能な人数ではありません。なお、しばしば引用される「不足数4万7千人弱(46,816.8人)」という数字は、厚生労働科学研究(平成28年度)が、平成26年医療施設静態調査と日本歯科医師会会員調査の個票分析から、理想と現状(常勤換算)の差として推計したものです。調査年・対象が古く、上記の検討会資料とは別の推計である点に留意してください。

歯科衛生士の免許登録者数と就業者数・潜在DH数を比較した棒グラフ

DH登録と就業の構造ギャップ(出典: 厚生労働省 衛生行政報告例・歯科衛生士の業務のあり方等に関する検討会資料/免許登録者321,241人・就業149,579人・就業割合46.6%〔令和6年〕に基づく)

就業歯科衛生士の多くは歯科診療所に勤務しています。令和6年末の就業歯科衛生士のうち診療所勤務は135,499人(構成割合90.6%)です。一方、令和6年医療施設(動態)調査では歯科診療所は66,378施設と多くあります。ただし、常勤・非常勤や複数勤務、地域偏在、診療所ごとの雇用人数の違いがあるため、施設数で単純に割って充足状況を判断することはできません。さらに、日本歯科衛生士会が紹介する全国歯科衛生士教育協議会の現状調査では、2024年度の新卒歯科衛生士の求人倍率は23.7倍とされています。これは養成校に寄せられた求人をもとにした新卒求人ベースの倍率で、分母・分子の算出条件や市場全体との関係は原報告書に当たらないと確定できないため、ここでは「紹介されている数値」として参照するに留めます。少なくとも新卒採用では求人超過が示唆されますが、市場全体の需給逼迫を断定するには地域別の求人求職データ等の補強が必要です。この環境では、面接を「応募者を選別する場」とだけ捉える発想が採用失敗につながりやすくなります。

面接を「見極め」から「双方向の動機づけ」へ

新卒採用で求人超過がうかがえる環境では、求職者が複数医院を並行して比較検討している可能性を想定して設計するのが現実的です。一方で、応募者の中には選考落ちを経験する人も一定数おり、医院側の見極め機能も必要です。つまり「合う人材を見極めつつ、その人に選んでもらう」二段構えが求められます。

転職経験率の高さは、歯科衛生士が職場を変えることが珍しくない職種であることを示します(職場選択への関心の高さを直接示す指標ではなく、ライフイベントや雇用形態、労働条件、地域事情などでも説明され得ます)。日本歯科衛生士会の第10回勤務実態調査(令和7年3月)では転職経験者は80.8%とされています。同調査では転職理由として「出産・育児」「結婚」「給与・待遇面」「勤務形態・勤務時間」などが挙げられています。なお、調査によっては人間関係が主要な離職・転職理由として扱われるものもあり、人間関係の位置づけは調査により異なります。いずれにせよ、ライフイベントや待遇・勤務形態への不安が論点になりやすいことは押さえておきたいところです。面接で医院が伝えるべきは待遇の羅列だけでなく「ここでは安心して働き続けられる」という根拠です。

求職者タイプ別の質問設計――潜在DH・ブランク者・第二新卒

ネガティブな転職理由は面接で直接聞き出しにくいものです。そこで「過去のマイナスを問う」のではなく「未来の理想を語らせる」質問へ転換します。タイプ別に評価軸と問いを設計しましょう。なお、本章以降の評価軸・質問例・打ち手・フォロー設計は、統計ではなく編集部の実務上の提案です。採用成果を保証するものではなく、自院でKPIを取りながら検証することを前提にしてください(以降、個別の免責表記は省略します)。

潜在DH・ブランク者・第二新卒のタイプ別に評価軸と質問設計を整理した比較表

タイプ別 面接質問設計(編集部による実務整理。統計データではなく実務上の提案です)

潜在DH・ブランク者

復職を希望する有資格者の支援は重要な課題です。厚生労働省の検討会でも離職者へのアプローチは困難であり、復職支援や離職防止等の対応が重要な課題とされています。面接では、「人生経験・患者コミュニケーション力」を評価軸として明示し、院内研修・OJT体制を具体的に提示するとよいでしょう(裏づけのない数値の提示は避けます)。

第二新卒・中途

早期離職を経験した層には「これまで直面した課題をどう解決しましたか」という問いが、前職批判を引き出すのではなく問題解決のプロセスやストレス耐性を評価しやすくします(構造化面接・行動を尋ねるコンピテンシー型の問いの一例です)。技術より人物像やコミュニケーションを重視する医院では、その点を見る質問設計が軸になります。

医院価値の伝え方――待遇数字より「働き続ける理由」を語る

給与だけで差別化するのは容易ではありません。歯科衛生士の賃金水準は賃金構造基本統計調査(厚生労働省・e-Stat)で確認できます。初任給の絶対額だけで選ばれ続けるのは難しいというのは、他産業との賃金上昇率を統制して比較した一次データに基づく断定ではなく、一般的な採用実務上の見立てです。だからこそ「働き続ける理由」を言語化する必要があります。

離職・就業継続に関わる要因として、人間関係や労働条件、待遇が挙げられます。たとえば宮城県を対象とした横断研究(2021年、J-STAGE掲載)のような地域限定の研究でも、人間関係や労働条件が就業継続に関わる要因として報告されています。地域や調査設計によって結果は異なり得るため、全国一般に拡張する際は注意が必要です。面接で、医院が人間関係や労働環境の改善にどう取り組んでいるかを具体的に語ることは、応募者の安心や信頼につながり得ます。

成長機会の提示も動機づけになり得ます。日本歯科衛生士会 第10回勤務実態調査では、現在の職場で改善してほしい点として78.6%が待遇改善を希望し、福利厚生の充実を求める声も57.6%に上っています。待遇とあわせて教育体制を具体的に示すことは検討材料になります。なお、当社が支援した医院でも、面接で医院理念と教育体制を一貫して伝えることが応募から内定承諾までに寄与した手応えはありますが、これは件数や比較条件を統制した検証ではなく、定性的な経験に基づく見解であり、効果を保証するものではありません。

面接当日の条件提示とクロージング――書面明示と検討時間の確保

採用競争が激しい環境では、内定通知を後日に回している間に他院へ流れる可能性があります。そのため面接の場で労働条件をすり合わせ、次の意思決定ステップを合意しておくことが有効です。ただし、口頭での提示だけで即決を迫るのは避けてください。労働基準法第15条および労働基準法施行規則第5条により、労働契約の締結時には、賃金・労働時間など一定の労働条件を書面の交付(労働者が希望する場合はFAX・電子メール等)で明示する義務があります。あわせて、2024年(令和6年)4月施行の労働条件明示ルール改正により、すべての労働者について「就業場所・業務の変更の範囲」、有期契約労働者については更新上限の有無・内容や無期転換に関する事項も明示事項に追加されています。歯科医院でも、勤務場所・担当業務の変更範囲やパート・有期契約の更新条件を労働条件通知書に明記する必要があります。なお、採用内定により労働契約が成立する場合は内定の時点が明示のタイミングになりますが、内定通知・承諾・条件付き内定など実務上の取扱いは内定の法的性質によって大きく異なります。内定通知書・労働条件通知書の運用は一律に判断せず、必ず社会保険労務士等の専門家にご確認ください。口頭のすり合わせは合意形成の補助に留め、必ず厚生労働省のモデル労働条件通知書等を用いた書面で、法定のタイミングで確定させましょう。

  1. 条件の事前ヒアリング:勤務時間・曜日・通勤など譲れない条件を冒頭で確認する

  2. 医院価値の提示:理念・教育体制・人間関係への取り組みを語る

  3. その場での条件すり合わせ:給与・勤務形態の方向性を共有し、不安点を解消する(条件は内定・契約成立の時点までに書面で明示する)

  4. 次ステップの合意:応募者の自由意思と検討期間を尊重し、回答期限と今後の流れを一緒に確認する

即時承諾を迫る過度なクロージングは、応募者とのトラブルにつながり得ます。あくまで「その場で不安を解消し、次の意思決定ステップを合意する」姿勢を基本とし、検討時間を確保してください。

内定後フォロー設計――辞退防止から入職までの関係構築

内定承諾はゴールではありません。入職までの空白期間に他院から声がかかれば辞退リスクが残ります。入職前から接点を維持し「ここで働く未来」を具体化させることは、辞退防止に資すると考えられます(効果を統制した検証データではなく、実務上の仮説です。自院での検証を前提にしてください)。

応募から入職までの採用ファネルと各段階の打ち手を示すフロー図

内定後フォローの流れ(ARXIA 編集部による実務整理。各段階の打ち手は編集部の提案です)

新人歯科衛生士の早期離職防止は重要な課題です。日本歯科衛生士会 第10回勤務実態調査でも、離職防止や復職支援に関する項目を引き続き設け、新人歯科衛生士の早期離職防止や教育プログラムの改良に役立つデータ収集を目指したとされています。内定後フォローは、入職後の立ち上がりや定着設計とつなげて考えるとよいでしょう。教育の標準化と1on1運用については、仕組み化とKPI運用の実装ガイドもあわせてご覧ください。各段階で応募者がどこで減っているかを見える化する「漏斗(ファネル)」の考え方は、集患の患者動線KPI設計のフレームワークとも共通します。

採用面接プロセス実務チェックリスト

面接設計を運用に落とすためのチェックリストです。各打ち手は採用成果を保証するものではなく、自院でKPIを取りながら検証することを前提にしてください。

  • 求職者タイプ(潜在DH/ブランク/第二新卒/新卒)を事前に分類しているか

  • タイプ別の質問テンプレートを統一しているか

  • 人間関係や労働環境の改善への取り組みを面接で具体的に説明できるか

  • 教育・研修体制を具体的な言葉で提示できるか

  • 勤務時間など譲れない条件を冒頭でヒアリングしているか

  • 内定により労働契約が成立する場合は、その時点までに労働条件を書面(労働条件通知書)で明示する段取りがあるか。就業場所・業務の変更範囲や有期契約の更新条件も漏れなく明示しているか(取扱いは社労士等に確認)

  • 即決を迫らず、検討時間を確保しているか

  • 内定後フォロー(見学・顔合わせ・定期連絡)の段取りがあるか

  • KPI(応募数・面接率・内定承諾率・3ヶ月/12ヶ月定着率・求人CPA)を記録しているか


【PR・自社サービスのご案内】以下は株式会社ARXIAのサービス案内です(上記の統計・制度解説とは性質が異なります)。周知・面接・入社後の各段階を統合した採用設計の考え方や事例については、Bench Clubメンバー限定の詳細レポートでも解説しています。自院の採用フローを見直したい方は、無料の30分相談もご活用ください。本記事の労務・法令に関する記述は一般的な解説であり、実務上の取扱いは社会保険労務士等の専門家にご確認ください。執筆・編集:石井 貴久(株式会社ARXIA 代表)。

よくある質問

人間関係や待遇といったネガティブな転職理由は直接聞き出しにくいものです。過去のマイナスを問うより『この医院で何を実現したいか』など未来志向の質問に転換すると、本音や価値観が引き出しやすくなります。また離職要因の認識ギャップ(衛生士は院長との人間関係を最大要因とする)を医院側から正直に開示すると信頼が生まれます。
復職希望者の最大の障壁は技術的不安です。厚生労働省の研究でも8割が再就職を希望しつつスキル不安が壁になっています。面接では『人生経験・患者コミュニケーション力』を評価軸として明示し、院内研修・OJT体制を具体的に提示することが復職の動機づけになります。勤務時間など条件ニーズの確認も重要です。
求人倍率23.7倍の環境では、後日通知の間に他院へ流れます。面接当日に労働条件を明示しクロージングまで進めること、そして内定後の見学・顔合わせ・定期連絡で接点を維持することが辞退防止に有効です。応募数・面接率・内定承諾率・定着率をKPIとして記録し、漏斗のどこで脱落しているかを可視化しましょう。

参考資料

  1. 日本歯科衛生士会|就業者数(厚生労働省調べ)
  2. 厚生労働省「歯科衛生士に対する復職支援・離職防止等推進事業」資料
  3. 日本歯科衛生士会「第9回・第10回 歯科衛生士の勤務実態調査報告書」
  4. 全国歯科衛生士教育協議会「歯科衛生士教育に関する現状調査の結果報告」
  5. 相田潤ほか「歯科衛生士の離職防止と復職に関連する要因」J-STAGE 2021年
  6. 平成28年度厚生労働科学研究「歯科衛生士及び歯科技工士の復職支援等の推進に関する研究」
  7. e-stat 衛生行政報告例(就業歯科衛生士統計)
  8. クオキャリア pocket「新卒歯科衛生士の求人倍率は20倍以上なのに…」
  9. コンサルプラス「歯科衛生士の需給と処遇を考える」
  10. 歯科医院の仕組み化で売上を伸ばす――現状分析から差別化戦略・KPI運用までの実装ガイド
  11. 歯科医院の患者動線KPI設計
  12. 歯科医院の採用成功率を劇的に向上させる最新戦略! — ARXIA 編集部

初回60分の壁打ちは無料。打ち手の優先順位だけでも、その場で持ち帰れます。

20 の質問に答えるだけ。AI が自由記述まで読み込み、自費率・新患数・組織課題など、あなたの院専用の改善レポートメールでお送りします。

完全無料 / 所要 5-10 分 / 登録不要

「現場介入型」と「仕組み構築型」、価格・契約期間・契約終了後に残るものの違いをガイドにまとめました。