
口腔機能低下症の検査・診断から口腔機能管理料へ|7項目評価と診療録をつなぐ実務(令和8年6月1日施行分)
口腔機能管理料の算定を安定させる鍵は、点数そのものより「7項目評価→診断→管理計画→文書提供→再評価」を診療録で一本につなぐことです。本記事では2026年の管理料1・2の区分、必須記録、計画書の構成、返戻を防ぐ院内監査チェックまでを実務順に整理します。
- ◆口腔機能管理料は50歳以上の口腔機能低下症が対象で、歯管等・同意・評価に基づく管理計画・月1回算定が前提となる
- ◆管理料1は90点(所定検査実施)、管理料2は50点。届出診療所では口腔管理体制強化加算50点を加算できる
- ◆診断は7項目中3項目以上該当が基本。測定値・実施日・該当数を診療録または添付で保存する
- ◆管理計画は目標・方針・再評価時期を文書化し患者へ提供、写しを診療録へ添付する
- ◆再評価は概ね6か月ごと。前回比較と計画更新、管理料1/2区分根拠の院内監査で返戻を防ぐ
口腔機能低下症と口腔機能管理料:令和8年6月1日施行分の算定対象・全体フロー
口腔機能管理料を無理なく運用するうえで編集部が優先度が高いと考えるのは、検査の実施そのものより「診断根拠・計画・文書・当日管理」を患者単位で連結して残すことです。本記事で扱う点数・要件は令和8年度診療報酬改定に基づくもので、歯科を含む本体部分の施行は令和8年6月1日です。令和8年5月診療分までは令和6年度改定の点数で算定するため、5月31日以前の診療分に新点数を適用しないよう注意してください(厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」、東海北陸厚生局 令和8年度施設基準の届出について)。項目によっては経過措置が設けられているため、自院で算定する項目の経過措置期限は告示・通知の附則で必ず確認してください。
厚労省の実施上の留意事項(歯科点数表)では、口腔機能管理料を「50歳以上の歯の喪失や加齢、これら以外の全身的な疾患等により口腔機能の低下を認める患者に対して、口腔機能の回復又は維持・向上を目的として行う医学管理」を評価したものと説明しています。歯科診療報酬点数表では「区分番号B000-4に掲げる歯科疾患管理料又は区分番号B002に掲げる歯科特定疾患療養管理料を算定した患者であって、口腔機能低下症の患者に対して……当該患者等の同意を得て、当該患者の口腔機能評価に基づく管理計画を作成し、当該管理計画に基づき、口腔機能の管理を行った場合に、月1回に限り算定する」とされています。前提となる歯科疾患管理料等について、通知の文言は「算定した患者」であり、同月・同日といった時期要件までは示されていないため、時期の取扱いは最新の疑義解釈で確認してください。なお、口腔機能低下症の診断そのものの基準は学会資料に依拠するため、後述のとおり参照した版を院内で明記してください。
令和8年度改定では、口腔機能管理料は管理料1・管理料2の2区分で示されています。留意事項通知では「D002-6に掲げる口腔細菌定量検査(2に限る。)、D011-2に掲げる咀嚼能力検査(1に限る。)、D011-3に掲げる咬合圧検査(1に限る。)、D011-5に掲げる口腔粘膜湿潤度検査又はD012に掲げる舌圧検査のいずれかを実施した口腔機能低下症の患者」に対する管理が管理料1とされ、それ以外は管理料2となります。具体的な点数は改定で見直されているため、算定前に告示(歯科点数表)本文で確認してください。口腔管理体制強化加算は、地方厚生局長等への届出が必要な施設基準項目で、近畿厚生局の特掲診療料の施設基準一覧にも「口腔管理体制強化加算」として掲げられています。点数、対象となる医療機関(病院を含むか)、どの管理料に加算できるか、根拠となる注番号は告示・通知の原文で確認が必要です。

点数の分岐や実地指導料との関係を先に整理したい場合は、口腔機能管理料1・2と口腔機能実地指導料の違いも併せて確認すると、院内の役割分担が明確になります。改定全体の優先順位(再届出・施設基準含む)については、Bench Club メンバー限定の詳細レポートでは、令和8年度改定の全体像と届出漏れが医院ごとの増収幅に与える影響を整理しています。
診断の根拠を作る7項目評価:検査値・該当項目・実施日の整理
診断の出発点は、7下位症状のうち3項目以上への該当です。日本歯科医学会「口腔機能低下症に関する基本的な考え方」では、口腔衛生状態不良、口腔乾燥、咬合力低下、舌口唇運動機能低下、低舌圧、咀嚼機能低下、嚥下機能低下の7項目を示し、3項目以上該当で診断するとされています。なお同資料は改訂を重ねており、日本老年歯科医学会の案内ページでは「令和2年3月30日公開、令和8年3月改訂」と示されています。院内マニュアルでは参照した版(公開日・改訂日)を必ず明記してください。
口腔機能精密検査は原則として7項目全てを行うことが望ましいとされます(=学会が推奨する診療手順であり、告示・通知上の算定要件そのものではありません)。誤嚥・誤飲リスク等で一部の項目を実施できない場合の取扱い(未実施が認められる理由、最低限必要な実施項目数、問診項目の扱い)は版によって記述が異なり得るため、本記事では要約せず、上記学会資料の該当箇所を原文で確認してください。院内では「実施した/未実施の理由/測定値/該当の可否/実施日」を1枚の検査票で揃えると、後工程のカルテ転記が楽になります。
7項目の閾値をカルテに残すときの目安
- 口腔衛生状態不良:舌背上の微生物数3.162×10^6 CFU/mL以上(レベル4以上)、又は日本歯科医学会資料が示す「TCI が50%以上(合計スコアが9 点以上)」
- 口腔乾燥:口腔粘膜湿潤度27.0未満、又はサクソンテスト2分間の重量増加2g以下
- 咬合力低下:使用機器に応じた閾値(例:デンタルプレスケールII・フィルタあり350N未満等)、又は残根・動揺度3を除く残存歯数20本未満
- 舌口唇運動機能低下:オーラルディアドコキネシスで/pa/・/ta/・/ka/のいずれかが毎秒6回未満
- 低舌圧:随意的最大舌圧30kPa未満
- 咀嚼機能低下:グルコース濃度100mg/dL未満、又は咀嚼能率スコア0・1・2
- 嚥下機能低下:EAT-10の合計点数が3点以上、又は聖隷式嚥下質問紙でA項目1つ以上
閾値の詳細は学会資料に依存するため、院内マニュアルは改訂版の日付を明記し、測定機器名と単位を必ず併記してください。
算定前にそろえる診療録記載:検査結果から診断名までの必須記録
算定前に最低限そろえるのは、(1)50歳以上であることの確認、(2)実施した検査項目の結果と該当数(未実施項目がある場合はその理由)、(3)口腔機能低下症の診断名、(4)歯科疾患管理料または歯科特定疾患療養管理料の算定状況、(5)患者等の同意、です。検査結果は、診療録への記載、記録用紙の診療録添付、又は検査結果を記載した管理計画書等の写しの診療録添付により保存します。
管理料1を算定する場合は、区分根拠となる検査(口腔細菌定量検査・咀嚼能力検査・咬合圧検査・口腔粘膜湿潤度検査・舌圧検査のいずれか)の実施日と結果を、管理料算定日と紐づけて残します(検査日と算定日の同日・同月といった時期要件は通知本文に明示がないため、疑義解釈で確認してください)。電子カルテでは、検査オーダー、結果値、診断入力、管理料算定が別画面に散らばりやすいため、患者ID単位で「評価日セット」を固定する運用が有効です。記録と予約・患者IDの接続を見直す際は、電子カルテと予約をつながる投資にするDXチェックリストも参考になります。
初回セットで欠落しやすい記載
- 未実施項目がある場合の理由(誤嚥リスク等)
- 使用した測定機器名・センサ種別(咬合力の閾値が機器で異なるため)
- 該当3項目の明示(「低下あり」だけでは根拠が弱い)
- 診断日と検査日の関係(同日/別日の別)
- 同意取得の主体(本人/家族等)と方法
口腔機能管理料の管理計画:目標・指導内容・患者説明を具体化する
【告示・通知上の算定要件】実施上の留意事項(歯科点数表)では「当該管理料を算定するに当たっては、口腔機能の評価及び一連の口腔機能の管理計画を策定し、当該管理計画に係る情報を文書により提供し、提供した文書の写しを診療録に添付する」とされています。管理実施日における口腔機能低下症の管理内容も、診療録に記載するか記録文書を添付します。
【学会が推奨する診療手順】日本歯科医学会の資料では、初回および再評価時の検査結果、全身状態、栄養状態・食形態、各機能の維持・向上目標、管理方針・治療予定、再評価時期を管理計画書の構成要素として示しています。目標は「舌圧を上げる」だけでは運用しづらいため、例として「舌圧○kPaを目安に訓練継続」「食形態の段階を維持」「口腔衛生のセルフケア頻度を週○回に固定」など、再評価で比較できる表現に落とします。
計画に書くと現場が回りやすい4要素
- 優先する下位症状(該当した項目から1〜2つに絞る)
- 院内で行う管理・訓練と、家庭で行う課題の切り分け
- 歯科衛生士・歯科医師の役割と次回までの観察ポイント
- 再評価予定(学会資料が示す目安は概ね6か月)と、途中確認の有無
情報通信機器を用いた医学管理については、施設基準の届出や対象患者の要件、点数区分が別に定められている場合があります。本記事では点数や要件の詳細を要約せず、確認すべき観点のみを示します。院内で整理する際は、(1)対象患者の要件(過去の算定歴・算定期間・直近の対面診療の有無など通知が列挙する条件)、(2)対面診療との組み合わせ方、(3)患者の所在や緊急時対応を含む診療体制、(4)厚生労働省「歯科におけるオンライン診療の適切な実施に関する指針」に沿った体制、(5)点数区分と施設基準の届出、の各項目を、令和8年度診療報酬改定の厚労省特設ページに掲載された告示・留意事項通知・施設基準通知の原文で1つずつ突き合わせ、通知の列挙どおりに院内ルールへ落としてください。
患者提供文書と院内テンプレート:カルテ・検査票・説明書の記載例
文書は「患者に渡す説明」と「審査・指導で見せる根拠」の二層で設計します。患者向けは検査結果の意味、今後の目標、家庭での留意点を短く。院内保管用は測定値、該当項目、管理方針、再評価時期、同意を欠かさず残します。学会資料の精密検査記録用紙・管理計画書ひな型を母体にし、自院の電子カルテ項目名に合わせて項目順を揃えるのが現実的です。
テンプレートに固定したい見出し例
- 患者基本情報(年齢・全身疾患・残存歯・義歯使用)
- 実施した項目の測定値・実施日・該当/非該当(未実施項目は理由)
- 診断名と診断日
- 管理目標(機能別)と指導内容
- 栄養・食形態・服薬など生活背景
- 再評価予定日と中間確認の要否
- 説明日・同意・文書提供の有無(写し添付)
記載例を作るときは、治療効果を断定する表現や、他院との比較優良に読める表現を避けます。一般的な管理の説明にとどめ、個別の予後保証は書かないことが重要です。告示・留意事項・疑義解釈の最新版は、令和8年度診療報酬改定の厚労省特設ページで確認してください。

継続管理・再評価時の記録:前回比較、計画見直し、記録漏れを防ぐ運用
【学会が推奨する診療手順】再評価は管理計画に従い、概ね6か月ごとに口腔機能精密検査で行い、再評価時にも管理計画書を作成・交付することが日本歯科医学会の資料で示されています。継続管理中の咬合力・舌圧・咀嚼能力について、必要に応じて3か月ごとに訓練手技・効果を確認し患者にフィードバックする旨も同資料に基づく臨床上の推奨であり、算定要件ではありません。ここでいう「管理上の確認頻度」と、各検査料を保険請求できる頻度はまったく別です。咬合圧検査・咀嚼能力検査・舌圧検査等には、通知でそれぞれ再検査の間隔や併算定の制限が定められており、3か月時点で確認を行っても検査料を算定できるとは限りません。自院で行う検査ごとの算定間隔・制限は、実施上の留意事項(歯科点数表)の各区分の本文で必ず確認してください。
再評価カルテで押さえたいのは「前回値との比較」です。数値、該当項目数、目標の到達/未達、計画変更理由、次回までの課題を同じ順で書くと、月次の担当が変わっても一貫します。記録・算定の漏れを避けるには、予約枠に「口管・再評価予定」をフラグし、会計前チェックで管理料1/2の区分根拠検査の有無を確認する二段構えが有効です。
再評価日の最小チェック
- 前回管理計画の目標と実績の対比が書かれているか
- 実施した項目の再測定値が残っているか(未実施項目は理由)
- 診断の継続/変更と、管理方針の更新理由があるか
- 新しい管理計画書の交付と写し添付があるか
- 歯管等の前提算定と同意の有効性が確認できるか
- 再検査を算定する場合、通知上の算定間隔・併算定制限を満たすか
記録が抜けやすい5つのポイントと院内チェックリスト
以下は編集部が実務整理として挙げる確認点であり、返戻や個別指導での発生頻度を示す公表資料に基づくものではありません。院内チェックは患者を無作為抽出し、「検査→診断→計画→文書→算定→再評価」を時系列でたどる形式にすると、単票チェックより穴が見えやすくなります。
- 測定値・実施日・該当数と診断名が連結していない
- 管理料1なのに区分根拠検査(口腔細菌定量検査・咀嚼能力検査・咬合圧検査・口腔粘膜湿潤度検査・舌圧検査)の実施日・結果の記録がない(通知本文には検査と管理料の同日・同月といった時期要件の明示がないため、時期の取扱いは疑義解釈で確認)
- 管理計画の文書提供・写し添付・同意が確認できない
- 管理実施日の具体的な管理内容が診療録にない
- 再評価で前回比較がなく、計画がコピーのまま更新されていない
月次の院内チェック(患者単位)
- 対象年齢(50歳以上)と診断基準(3項目以上)の充足
- 管理料1/2の区分根拠と、告示上の点数区分の一致
- 口腔管理体制強化加算を算定する場合の届出・施設基準
- 歯管または特疾管の算定状況(時期要件は通知・疑義解釈で確認)
- 情報通信機器利用時は施設基準・対象患者要件・点数区分を通知で確認
- 診療月が令和8年6月1日以降か(5月診療分までは旧点数)
制度解釈や個別案件の判断は、まず告示・留意事項通知・疑義解釈資料の原文にあたり、なお不明な点は管轄の地方厚生(支)局の疑義照会窓口へ、保険医療機関自身から照会するのが公的な確認ルートです(例:北海道厚生局「診療報酬、調剤報酬の算定方法等に係る照会方法について」。同ページでは、保険医療機関等以外の民間事業者等からの照会には対応しない旨が示されています)。顧問税理士・社会保険労務士やコンサルタント等への相談は、税務・労務・院内体制づくりといった各自の専門範囲にとどまり、最終的に何をどう算定して請求するかを決め、責任を負うのは自院(開設者・保険医と院内の保険請求責任者)です。本記事は一般的な実務整理であり、個別の算定可否を保証するものではありません。まずは自院の検査票と管理計画書を1患者分だけ通読し、上記5点に抜けがないかを点検するところから始めてみてください。
よくある質問
- Q. 口腔機能管理料1と2は何が違うのですか?
- 所定の検査(口腔細菌定量検査・咀嚼能力検査・咬合圧検査・口腔粘膜湿潤度検査・舌圧検査のいずれか)を実施した患者が管理料1(90点)、該当しない場合が管理料2(50点)です。いずれも口腔機能低下症と診断された50歳以上の患者への月1回の管理が前提です。
- Q. 口腔機能低下症はどのように診断しますか?
- 口腔衛生状態不良、口腔乾燥、咬合力低下、舌口唇運動機能低下、低舌圧、咀嚼機能低下、嚥下機能低下の7項目のうち、3項目以上に該当した場合に診断します。精密検査は原則7項目全てが望ましいですが、実施困難な項目がある場合は実施できた検査で3項目以上該当すれば診断できると整理されています。
- Q. 管理計画書には何を書けばよいですか?
- 日本歯科医学会の2026年3月版では、検査結果、全身状態、栄養状態・食形態、各機能の維持・向上目標、管理方針・治療予定、再評価時期などが構成要素として示されています。患者へ文書提供し、写しを診療録に添付します。
- Q. 再評価はどのくらいの間隔ですか?
- 管理計画に従い概ね6か月ごとに口腔機能精密検査で再評価し、再評価時にも管理計画書を作成・交付することが示されています。咬合力・舌圧・咀嚼能力は必要に応じて3か月ごとの確認も示されています。
- Q. 返戻を防ぐために最初に何を点検すべきですか?
- 患者単位で、7項目の測定値と該当数、診断名、管理料1/2の区分根拠、同意と計画文書の提供・添付、当日管理内容、再評価時の前回比較が時系列でつながっているかを確認してください。
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令和8年度歯科診療報酬改定 ポイント解説
令和8年度(2026年度)歯科診療報酬改定の全体像を解説した資料。施行日は6月1日で本体改定率は+3.09%。初再診料引き上げ・歯科外来物価対応料・ベースアップ評価料など収入の土台が増える項目と、医科歯科連携・口腔機能管理・デジタル系の新設項目が特徴。一方で歯科疾患管理料や少数歯SPT、大人数訪問は減点となる。最重要タスクは再届出が必要な施設基準の漏れなき提出であり、届出状況によって医院ごとの増収幅が大きく異なる構造となっている。
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