ARXIADENTAL GROWTH OS
財務戦略|在宅療養支援歯科診療所 施設基準×収益設計の教科書――2

在宅療養支援歯科診療所の施設基準と訪問歯科の算定整理――2026年改定で押さえる訪問診療4・5の施設基準と医科歯科連携

2026年6月施行の改定で訪問歯科の収益構造は大きく変わりました。結論から言えば、歯援診1・2の届出有無で訪問診療料・加算の算定額に明確な差が生まれ、外来併設型でも「注15基準」の届出で満額算定が可能です。本記事では訪問診療料の細分化、施設基準ロードマップ、1件あたり収益試算、外来とのハイブリッド設計までを実数値で解説します。

  • 2026年6月改定で訪問診療料が細分化され訪問診療4(160点)・5(95点)が新設。届出なし・要件未充足は50%減算(令和9年5月末まで経過措置)
  • 在宅歯科医療推進加算は3段階に再編。歯援診1・歯援病は100点維持、歯援診2は50点へ半減、届出なしは0点と差が拡大
  • 外来併設型は注15基準の届出で訪問診療1〜5を満額算定可能。95%ルールで専門型と分岐する
  • 訪問衛生指導料は10人以上で減点、特別の関係施設は一律140点。9人と10人の間に収益の崖がある
  • 医科連携訪問加算+500点・口腔管理連携加算600点・NST区分4新設など医科歯科連携が収益の柱に

2026年改定の訪問歯科:訪問診療4・5に施設基準が新設

令和8年度診療報酬改定は、診療報酬本体について+3.09%(令和8年度+2.41%、令和9年度+3.77%の2年度平均)とされました。歯科を含む診療報酬点数表は「診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年3月5日厚生労働省告示第69号)」として告示され、適用開始は令和8年6月1日です(薬価改定は4月1日施行)。点数・施設基準・算定要件は、必ず告示・通知・疑義解釈の一次情報で確認してください。

訪問歯科領域の2026年改定での重要な変更の一つは、厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】」(令和8年3月5日版)で示された歯科訪問診療4及び歯科訪問診療5の施設基準の新設です。同概要では、同一建物に居住する多数の患者に対する歯科訪問診療を適切に提供する観点からの見直しと説明されています。同概要では、歯科訪問診療4・5について「在宅療養支援歯科診療所1、在宅療養支援歯科診療所2又は在宅療養支援歯科病院に係る施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関以外の保険医療機関及び別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険医療機関以外の保険医療機関においては、所定点数及び注6に定める所定点数の100分の50に相当する点数により算定する」とされています(正式な条文・要件は告示第69号・関係通知でご確認ください)。

歯科訪問診療料の点数は、同一建物の人数区分に応じて歯科訪問診療1が1,100点、2が410点、3が310点、4が160点、5が95点です(点数は厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】」等による。最終確認は告示第69号で)。歯科訪問診療2・3の区分見直しを含む再編は令和6年度改定で行われたもので、4・5の新設は令和8年度改定です。最新の点数・算定要件は厚生労働省の告示および所管の地方厚生(支)局資料でご確認ください。

歯科訪問診療料を人数区分別に比較した棒グラフ
歯科訪問診療料の人数区分別点数(厚生労働省 歯科診療報酬点数表・地方厚生局資料を基に編集部作成)

在宅療養支援歯科診療所(歯援診)の施設基準

在宅療養支援歯科診療所(歯援診)は、在宅又は社会福祉施設等における療養を歯科医療面から支援する歯科診療所で、在宅療養支援歯科診療所1と在宅療養支援歯科診療所2の区分があります(このほか在宅療養支援歯科病院があります)。届出を行うと、一般の歯科診療所より高い点数を算定できる項目があり、いくつかの項目では歯援診1の方が歯援診2より高い点数を算定できます(具体項目は概説にとどめます。詳細は通知でご確認ください)。

歯援診の施設基準は、特掲診療料の施設基準告示(令和8年厚生労働省告示第71号)および「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(保医発0305第8号)に定められています。以下は基本要件の抜粋であり、要件の全体像・実績期間・回数・連携先・経過措置等は告示・通知で必ずご確認ください。

  • 歯科訪問診療料を算定している実績があること(実績の期間・回数は告示・通知で規定)
  • 高齢者の心身の特性(認知症に関する内容を含む)、口腔機能の管理、緊急時対応等に係る適切な研修を修了した常勤の歯科医師が1名以上配置されていること
  • 担当歯科医の氏名・診療可能日・緊急時の注意事項等を、事前に患者又は家族へ説明の上、文書により提供していること

歯援診1と歯援診2では、歯科訪問診療の実績回数や連携実績など求められる要件の水準が異なります(一般に歯援診1の方が要件が重い)。具体的な実績回数・連携要件・経過措置は年度改定ごとに見直されるため、令和8年度の要件は告示第71号・保医発通知でご確認ください。2026年改定では、概要資料で在宅療養支援歯科診療所について、歯科医師臨床研修施設における歯科訪問診療の研修・教育体制を評価に加える等の見直しが示されています。

3月から6月までの施設基準届出スケジュールを示すフロー図
施設基準届出スケジュールの一例(厚生労働省「施設基準届出チェックリスト」等を基に編集部作成)

届出様式は所管の地方厚生(支)局のページから取得してください。令和8年6月1日から算定を開始するためには、所定の届出期間内(所管局の案内に従う)に届け出る必要があります。施設基準の具体的な要件は告示・通知等で確認が必要であり、通知の訂正等により内容が変更される場合があるため、届出時に改めて最新情報を確認してください。

算定区分による点数差の整理(適正算定の観点から)

歯科訪問診療料は、同一建物居住者等の人数区分に応じた所定点数を1日につき算定する構造であり、要件を満たす場合に各種加算(歯科訪問診療補助加算、在宅歯科医療推進加算など)を所定点数に加算します。届出区分により算定できる加算が異なるため、自院の体制に応じた適正な届出を確認することが重要です。なお、加算の名称・点数・対象施設・存続や統合の有無は改定で変わり得るため、令和8年度の取扱いは告示・通知でご確認ください。

2026年改定では、概要資料で在宅療養支援歯科診療所及び在宅療養支援歯科病院における歯科訪問診療1を実施した場合の加算の新設が示されており、施設の機能・実績に応じた評価へ再編される方向です。加算の名称・点数・対象施設・算定要件・旧点数からの変更は告示・通知でご確認ください。

医科歯科連携については、厚生労働省の概要資料で、連携を行っている歯科標榜のない病院等の依頼により、入院患者に歯科訪問診療を実施した場合の加算の新設が示されています。これは歯科訪問診療を実施する側の加算です。対象患者・依頼元・実施場所・算定回数・併算定不可・記録要件など正式な名称と要件は告示・通知・疑義解釈でご確認ください。

外来併設型での留意点:訪問患者割合と注15届出

外来併設型の医院が押さえるべきは訪問患者割合のルールです。歯科訪問診療を実施する保険医療機関は、原則として歯科訪問診療料の「注15」に規定する基準(直近1か月の診療患者のうち歯科訪問診療を提供した患者の割合が一定未満であること等)を満たす旨を地方厚生(支)局長に届け出ることとされ、在宅療養支援歯科診療所1又は2の届出を行っている場合はこの限りではないとされています。正式な要件は告示第69号・関係通知でご確認ください。

訪問患者の割合が高い(在宅歯科医療を専門に行うとされる水準に該当する)場合は、別途、在宅療養支援歯科診療所に係る基準の確認・届出が必要になることがあります。割合の具体的な閾値や該当時の取扱いは通知に定められているため、運用前に通知でご確認ください。ただし、歯科訪問診療4・5については、前述のとおり在宅療養支援歯科診療所1・2又は在宅療養支援歯科病院の施設基準に適合しているものとして届け出た保険医療機関等以外では所定点数の100分の50で算定するため、注15届出だけで4・5を所定点数どおり算定できるわけではない点に注意が必要です。また、実際に各区分を算定するには、訪問診療の対象(在宅等で療養し通院が困難な患者)、診療場所、人数区分、診療時間・記録、同一建物居住者の扱いなど、各区分の個別の算定要件を満たす必要があります。対象・例外・経過措置を含め、詳細は告示・通知でご確認ください。

時間設計の基本は、外来の診療体制に支障が出ない範囲で訪問枠を確保することです。人員配置・移動時間・緊急時対応体制と届出要件を踏まえ、無理のない枠組みを設計してください。

ケアマネジャー・医科介護連携:患者ニーズに応じた連携の3つの接点

通院困難な患者に適切な歯科医療を届けるには、紹介・連携ルートの整備が前提となります。連携は大きく3つの接点で設計できます。

  1. ケアマネジャー・地域包括支援センター:在宅療養を支える多職種との情報共有が、患者の口腔管理の継続につながります
  2. 介護保険施設・在宅医療チーム:口腔管理の技術的助言や健診協力が信頼構築につながります
  3. 医科連携(病院・在宅医):歯科標榜のない病院等の依頼により入院患者へ歯科訪問診療を行う場合の評価(前述の歯科側の加算)を活かした連携

在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料については、厚生労働省の概要資料で、対象患者の拡大及び歯科医師の指示を受けた歯科衛生士による指導の評価の新設が示されています。区分の新設や実施者の拡大などの具体的要件は、対象行為ごとに通知の文言に即して確認する必要があります(詳細は告示・通知・疑義解釈でご確認ください)。

訪問導入を検討する際の判断材料

訪問導入の可否は、常勤歯科医師・歯科衛生士の人員体制、訪問実績、連携実績、移動時間、外来の診療体制への影響などから総合的に判断します。以下は検討の目安です。

訪問歯科衛生指導料の人数区分別点数を示す比較表
訪問歯科衛生指導料の人数区分(厚生労働省 歯科診療報酬点数表・地方厚生局資料を基に編集部作成)

2026年改定では、訪問歯科衛生指導料について、指導を実施した人数に応じた評価の見直し(単一建物診療患者が少人数の場合と多人数の場合で評価が異なる方向)が示されています。人数区分ごとの改定前後の点数、対象施設、除外条件、同一月の人数カウント方法は、告示第69号・関係通知で必ずご確認ください。なお、「特別の関係」にある医療機関等への取扱いの規定は、歯科訪問診療料の規定とは別項目として整理されています。

外来を主軸とする医院の場合、外来の診療体制を維持しながら、常勤歯科医師・歯科衛生士の体制や訪問実績・連携実績を踏まえて歯援診の届出可否を検討し、注15届出による訪問診療1〜5の算定体制を整える、という順序で設計するのが一つの考え方です。最終的な判断は自院の人員・実績・地域ニーズに即して行ってください。

算定実務でつまずきやすいポイントと対策

訪問歯科衛生指導料には1日あたりの算定上限など運用上の制限が設けられています。具体的な上限人数や非常勤歯科衛生士の換算方法は通知で規定されているため、運用前に最新の告示・通知で確認してください。

人数の数え方は診療料と衛生指導料で異なります。歯科訪問診療料は「同一建物居住者」の1日あたりの人数区分、訪問歯科衛生指導料は「単一建物診療患者」の人数区分で算定します。単一建物診療患者は、原則として同一月に同じ建物で当該指導料を算定した実人数でカウントします(延べ人数ではありません)。施設・居宅が混在するケースや月途中の患者増減、複数回訪問の扱いには例外規定があるため、レセコン設定と運用ルールを混同すると算定エラーや査定の原因になります。正確な定義・数え方は通知でご確認ください。

緊急対応の算定ルールも実務上重要です。1人の同一建物居住者に対して歯科訪問診療を実施中に、患者等の求めに応じて緊急に他患者を診療する必要を認め、結果として複数の同一建物居住者への歯科訪問診療となった場合の取扱いや、その際に診療録へ理由を記載する要件などが通知で整理されています。正式な算定要件は告示・通知・疑義解釈でご確認ください。


※本記事の点数・施設基準・算定要件は、厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】」(令和8年3月5日版)、告示(令和8年3月5日厚生労働省告示第69号・第71号等)・関係通知などの一次情報に基づいて記載していますが、通知の訂正や疑義解釈により内容が変わる場合があります。届出・算定にあたっては必ず最新の告示・通知・地方厚生局資料をご確認ください。施設基準の届出や保険請求の具体的な判断については、所管の地方厚生(支)局、保険者、歯科医師会、保険医協会など、保険診療・施設基準に詳しい窓口にご相談ください。

(参考)関連記事:2026年改定のガイド(自サイト記事。制度の確認は上記の一次情報で行ってください)

よくある質問

訪問患者割合が直近1か月で95%未満の外来併設型は、「歯科訪問診療料の注15に規定する基準」を届け出ることで訪問診療1〜5を満額算定できます。95%以上だと在宅歯科医療専門の保険医療機関扱いとなるため、外来主軸の医院は注15届出を押さえることが重要です。
再編後の在宅歯科医療推進加算が歯援診1は100点、歯援診2は50点と差が生じるほか、訪問診療4・5の50%減算回避や各種加算の算定可否にも影響します。訪問件数が多い医院ほど歯援診1取得の経済的インパクトは大きくなります。
異なります。訪問診療料は「同一日の同一建物内人数」、訪問歯科衛生指導料は「1か月間の単一建物診療患者の実人数」でカウントします。レセコン設定と運用ルールを混同すると算定エラーや査定につながるため注意が必要です。
目安として3月に告示確認と届出項目のリスト化、3〜4月にレセコンマスタ更新、4月に院内研修とベースアップ試算、5月に厚生局へ届出提出、6月1日施行という流れです。再届出が必要な基準の漏れが増収幅を左右するため、早期着手が有効です。

この記事の詳細は Bench Club 限定レポートで

令和8年度(2026年度)歯科診療報酬改定の全体像を解説した資料。施行日は6月1日で本体改定率は+3.09%。初再診料引き上げ・歯科外来物価対応料・ベースアップ評価料など収入の土台が増える項目と、医科歯科連携・口腔機能管理・デジタル系の新設項目が特徴。一方で歯科疾患管理料や少数歯SPT、大人数訪問は減点となる。最重要タスクは再届出が必要な施設基準の漏れなき提出であり、届出状況によって医院ごとの増収幅が大きく異なる構造となっている。

参考資料

  1. 施設基準と報酬|日本訪問歯科協会
  2. 歯科訪問診療料に加算できる報酬|日本訪問歯科協会
  3. 2026年歯科診療報酬改定ー訪問歯科(告示対応)|デンタルネット
  4. 2026年診療報酬改定_訪問歯科増減算まとめ|デンタルネット
  5. 2026年診療報酬改定_医科歯科連携算定項目まとめ|デンタルネット
  6. 令和8年度歯科診療報酬改定のポイント|シラネ
  7. 2026年度歯科診療報酬改定完全ガイド|function-t.com
  8. 在宅療養支援歯科診療所の施設基準|歯科医療情報推進機構
  9. 2026改定の収益インパクト試算|診療形態別
  10. 歯科 診療報酬改定 2026 完全ガイド
  11. 令和8年度歯科診療報酬改定 ポイント解説
    Bench Club で続きを読む →

初回60分の壁打ちは無料。打ち手の優先順位だけでも、その場で持ち帰れます。

20 の質問に答えるだけ。AI が自由記述まで読み込み、自費率・新患数・組織課題など、あなたの院専用の改善レポートメールでお送りします。

完全無料 / 所要 5-10 分 / 登録不要

「現場介入型」と「仕組み構築型」、価格・契約期間・契約終了後に残るものの違いをガイドにまとめました。