
口管強まわりの算定状況を月次レセプトで点検する実務ガイド――2026年改定の歯周病継続支援治療・口腔機能管理料・口腔機能実地指導料
結論、2026年6月改定後の口管強(口腔管理体制強化加算)は「届出しているか」よりも「算定し切れているか」で増収幅が分かれます。本記事では3つの主要変更点を整理し、算定漏れを月次で発見するレセプト指標、歯周病継続支援治療への移行フロー、口腔機能実地指導料(新設46点)の体制整備、そして算定率を80%超で回すKPIダッシュボード設計まで、数値シミュレーション付きで解説します。
- ◆口管強の施設基準は2026年改定でほぼ変更なし・既届出は再提出不要。変わったのは周辺点数(歯周病継続支援治療の統合・口腔機能実地指導料新設・口腔機能管理料の2段階化)の運用
- ◆月次で見るべきは『口管強加算の対面算定率』『口腔機能管理料の算定率』『口腔機能実地指導料の算定有無』の3指標。中医協データでは口機能の算定率は歯管に対し約0.65%と低調
- ◆口腔機能実地指導料46点は研修DH配置・実施時間/ユニット確保などの施設基準が前提(研修要件は2027年5月31日まで経過措置)
- ◆口腔機能管理を取らないと歯管純減で年間約-12万円、口機能2+実地指導料なら年間約+115万円に転じる試算
- ◆施設基準届出期限は2026年5月7日〜6月1日(必着)。レセプト確認→施設基準チェック→改善を月次1サイクルで回す
なぜ今、口管強まわりの「算定状況」を月次で点検するのか
2026年6月施行の令和8年度診療報酬改定では、令和8年度診療報酬改定について(改定率/厚生労働省)のとおり、診療報酬本体の改定率は令和8・9年度の2年度平均で+3.09%(令和8年度+2.41%/令和9年度+3.77%)です。ただしこの+3.09%は医科・歯科・調剤を合わせた診療報酬本体全体の数値で、年度平均として示されている点に注意が必要です。歯科分野単体の改定率は+0.31%とされており、本体全体の数値とは区別する必要があります。なお歯科の改定率には、物価対応分や賃上げ対応分といった用途別の配分が含まれており、令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】(厚生労働省)で内訳を確認できます。マクロの改定率は個々の歯科医院の増収を直接保証するものではなく、増減は医院類型・患者構成・届出状況・個別点数の見直しによって大きく異なります。算定の前提はあくまで医学的必要性・診療録の記載・算定要件の充足であり、本記事は「未算定=取りこぼし」ではなく、診療実態と要件充足を確認するための月次点検の考え方を扱います。
口管強(口腔管理体制強化加算)は、令和6年改定で「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)」の名称が「口腔管理体制強化加算」に変更されるとともに、施設基準が見直された加算です(単なる名称変更ではなく、口腔機能管理に関する実績要件の追加など要件の再編を伴います。令和6年度診療報酬改定の概要【歯科】(厚生労働省))。届出後は、当該施設基準の届出医療機関として、対象患者で要件を満たした算定が診療実態に即して行われているかを月次で確認することが実務上は有用です。本記事の要点は「計測→比較→打ち手」の3ステップです。
2026年6月改定で口管強まわりが変わった――確認したい周辺点数
本記事で扱うのは、口管強の届出医院が運用上関連して確認したい3つの周辺点数(歯周病継続支援治療・口腔機能実地指導料・口腔機能管理料)に限定した説明です。口管強は令和8年度点数表全体ではこれら以外の管理料・処置等にも関係するため、自院に関わる範囲は告示・通知の原文で網羅的に確認してください。下記のとおり、本記事で扱う3項目のうち口管強の施設基準の届出が直接の加算要件になるのは歯周病継続支援治療の口管強加算であり、口腔機能実地指導料・口腔機能管理料はそれぞれ別の要件・施設基準に基づきます。各点数の算定要件・施設基準は、厚生労働省の告示・留意事項通知の原文で確認してください(令和8年度診療報酬改定について(厚生労働省)/歯科点数表(告示第69号)・特掲診療料の施設基準等(告示第71号)・留意事項通知(保医発0305第6号))。
項目口管強との関係歯周病継続支援治療の口管強加算120点(歯科点数表 I011-2 注3)口管強(口腔管理体制強化加算)の施設基準の届出が加算要件口腔機能実地指導料46点(B001-2-2)口管強とは別の施設基準・算定要件(告示第71号・通知で確認)口腔機能管理料1・2口管強とは別要件(対象病名・検査等)変更点1:SPTとP重防が「歯周病継続支援治療」に統合
厚生労働省の概要資料によれば、令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】(厚生労働省)のとおり、歯周病安定期治療(SPT)と歯周病重症化予防治療(P重防)が統合され、歯周病継続支援治療に改称・評価の見直しが行われました。点数は歯数で1歯以上10歯未満170点・10歯以上20歯未満200点・20歯以上350点です(歯科点数表 I011-2/令和8年厚生労働省告示第69号・歯科点数表(厚生労働省))。口管強の施設基準の届出医療機関は、歯科点数表 I011-2の注3に基づき、要件を満たす場合に口腔管理体制強化加算として120点を所定点数に加算できます(同 告示第69号 I011-2 注3/留意事項通知 保医発0305第6号)。具体の算定間隔・要件は留意事項通知の該当区分でご確認ください。
変更点2:口腔機能実地指導料(46点)の新設
従来の歯科衛生実地指導料の口腔機能指導加算が廃止され、独立した口腔機能実地指導料(B001-2-2)46点が新設されました(令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】(厚生労働省)、令和8年厚生労働省告示第69号・歯科点数表/留意事項通知(保医発0305第6号)(厚生労働省))。研修を受けた歯科衛生士が主治の歯科医師の指示を受けて口腔機能に係る指導を行い、指導内容を文書提供した場合に、口腔機能発達不全症・口腔機能低下症の患者を対象として月1回算定します。算定要件・施設基準・併算定制限は次節のチェックリストおよび留意事項通知で確認してください。
変更点3:口腔機能管理料の2段階化
口腔機能管理料は、規定の検査を実施した場合は口腔機能管理料1、検査を実施しない場合は口腔機能管理料2に再編されました(令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】(厚生労働省)、令和8年厚生労働省告示第69号・歯科点数表(厚生労働省))。ただし1と2の区別は「検査の有無」だけで選べるものではなく、対象患者・年齢・対象病名、必要な記録(管理計画・文書提供)、算定間隔、併算定制限などが絡みます。具体の点数・対象・算定要件は告示第69号・留意事項通知の該当区分で確認してください。歯科疾患管理料(歯管)対象患者のうち口腔機能低下症・口腔機能発達不全症と診断された患者については、要件を満たせば口腔機能管理を算定できますが、歯管対象患者と口腔機能管理料対象患者は一致せず、算定は医学的必要性と要件充足(対象病名・検査等)を前提とします。

算定状況を月次で点検するレセプト指標3選
届出済み医院がまず確認したいのは「対象患者で要件を満たしているのに算定できていない箇所」と「要件を満たさない算定がないか」の双方です。次の3つはいずれも本記事で定義する院内モニタリング用の管理指標であり、診療報酬上の正式名称ではありません。月次レセプトから拾い、自院の過去推移と比較して位置を確認します。いずれも単純な比率をベンチマーク化するのではなく、対象病名・検査・要件充足の段階を区別して見ます。なお、レセプトで確認できるのは算定の有無や病名の付与状況までで、施設基準の有効性、研修受講DHの配置、診療録記載、文書提供、検査結果、患者説明内容はレセプトだけでは確認できません。これらはカルテ監査・施設基準の届出台帳・研修修了記録・文書交付控えで別途確認します。
- 口管強加算の併算定状況(管理指標)=歯周病継続支援治療を算定した患者のうち、口管強加算120点を併算定できた割合。低率の場合は、まず対象患者か・要件を満たしているか・診療録の記載があるか・施設基準と届出が有効か・併算定制限に触れていないか・レセコン設定が正しいか、の順で確認します。レセコン設定漏れは要因の一つにすぎず、対象外・要件未充足など別要因もあります。
- 口腔機能管理料の算定状況(管理指標)=歯管算定のうち、口腔機能発達不全症・口腔機能低下症の病名があり、かつ検査・評価の要件を満たす候補患者を分母として、口腔機能管理料の算定状況を確認します。歯管全体を分母にすると要件を満たさない患者まで「未算定候補」に見えるため、分母は「対象病名あり」「検査・評価対象」「要件充足候補」に段階化して把握します。病名が付いていても追加の管理料の算定には別要件があり、歯管のみ算定の患者がすべて口腔機能管理料の対象になるわけではありません。
- 口腔機能実地指導料の算定有無(管理指標)=対象患者(発達不全症・低下症)に対し、施設基準と算定要件を満たして46点を月1回算定できているか。研修受講DHの配置等が前提のため、未算定が続く場合は体制側の要因も検討します。
これらの指標は、自院の過去推移を基準に確認するのが基本です。同規模医院ベンチマークと比較する場合は、母集団の定義をそろえる必要があります。可能であれば週次での確認も検討できます。稼働と人件費を併せて見る考え方はパート・時短×シフト最適化のKPI設計も参考になります。
歯周病継続支援治療への移行フロー――対象候補の抽出と要件の個別確認
SPT・P重防の統合に伴い、既存のメインテナンス患者を一律に歯周病継続支援治療へ移すのではなく、対象候補を抽出したうえで、患者ごとに要件充足を個別に確認することが基本です。対象患者・算定要件は、歯科点数表(I011-2)と留意事項通知(保医発0305第6号)の文言で確認してください(令和8年厚生労働省告示第69号・歯科点数表/留意事項通知(厚生労働省))。

注意点として、統合に伴う歯数区分や旧点数との関係で、患者によっては旧SPT・旧P重防より評価が変動する場合があります。旧区分や加算の有無、患者状態、歯周病検査、治療計画、経過措置によって扱いが変わるため、移行時は歯数区分と算定要件を留意事項通知で個別に確認してください。
口腔機能実地指導料をDH業務に組み込む体制整備
口腔機能実地指導料46点は、施設基準を満たす体制が前提です。以下は告示・通知に当たって確認すべき項目の整理であり、正式な施設基準・算定要件の文言は特掲診療料の施設基準(告示第71号)および留意事項通知(保医発0305第6号)の原文が優先します。院内運用上の推奨事項と正式要件は分けて扱ってください。
- 口腔機能発達不全症・口腔機能低下症の実地指導に係る適切な研修を受けた歯科衛生士の配置(研修要件・経過措置の期限は通知で確認)
- 主治の歯科医師の指示に基づき歯科衛生士が指導を実施し、指導内容を文書提供
- 歯科衛生士が口腔機能の指導を行うための設備・体制
- 届出の要否・様式・経過措置(告示第71号・施設基準通知で確認)
- 併算定制限(算定間隔・同月算定制限を含む)は留意事項通知・疑義解釈で確認(誤ると返戻・査定に直結)
正式な要件は厚生労働省の告示・通知が優先します。小児の口腔機能発達不全症の保険・自費の区分については小児の口腔機能発達不全症の実務ガイドが役立ちます。
月次モニタリングの設計――算定状況・要件充足の考え方
モニタリングに必要なのは「3要素」です。①届出区分(口管強の有無)、②上記3指標の算定状況、③診断・管理・指導の実態と要件充足。この3つを並べると、打ち手の優先順位が整理できます。確認の段取りとしては、レセプトで拾える項目(算定の有無・病名の付与)と、カルテ監査・施設基準台帳・研修記録・文書交付控えで確認すべき項目(要件充足の実態)を分けて点検すると、要件充足の判定漏れを防げます。
点数の見積りは、算定ありきではなく、診断・管理・指導の実態と要件充足が前提です。歯管・口腔機能管理料・口腔機能実地指導料の同一患者・同一月での併算定可否、算定間隔、同月算定制限、対象病名、検査要件は、留意事項通知・疑義解釈で確認したうえで判断してください。これらの確認なしに各点数を単純に積み上げると査定リスクが高く、適切ではありません。仮に試算を行う場合も「対象患者率×実施率×要件充足率」を分けて保守的に置くべきで、全患者が対象になる前提は成り立ちません。診断・管理・指導の実態を伴わない算定は適切ではありません。

算定状況を点検するサイクル――レセプト確認→施設基準チェック→改善
運用上は、月次定例で「レセプト確認→施設基準チェック→改善ToDo」を1サイクルで回し、翌月に持ち越さない進め方が考えられます。
具体的には、施設基準の届出を最新化したうえで(届出期限は地方厚生局・厚生労働省の通知で確認してください。地域差・経過措置の有無に注意)、毎月のレセプトで前述の3指標を確認し、要件を満たす対象患者で未算定が見つかればDHシフトや院内フローに反映します。会議体に数値とToDoを乗せて自走させる進め方はスタッフ主導カイゼン会議の設計術が参考になります。
口管強は「届出」だけでなく、対象患者で要件を満たした算定が診療実態に即して行われているかを毎月確認することが本質です。算定可否は、個別の診療内容・診療録の記載・告示・留意事項通知・疑義解釈に基づき確認してください。
本記事は一般的な情報提供であり、個別の算定の適否を保証するものではありません。実際の算定・施設基準・併算定の可否は、厚生労働省の告示・留意事項通知・疑義解釈および管轄の地方厚生局等で必ず確認してください。導入や運用設計のご相談は無料の30分相談からどうぞ。
よくある質問
- Q. 口管強を既に届出済みですが、2026年改定で再届出は必要ですか?
- 口管強の施設基準自体は2026年改定でほぼ変更がなく、既届出医院は再提出不要です(新規届出は最新様式を使用)。ただし口腔機能実地指導料など新設項目の施設基準は別途届出が必要なため、関連項目ごとに確認が必要です。届出期限は2026年5月7日〜6月1日(必着)です。
- Q. 口腔機能管理料を算定していないと、どのくらい損をしますか?
- 歯科疾患管理料が100点→90点に引き下げられたため、口腔機能管理を全く算定しないと純減10点を放置することになり、月間100名の医院で年間約12万円のマイナスです。一方、口機能2(50点)+口腔機能実地指導料(46点)を算定すれば+96点/人で、年間約115万円のプラスに転じる試算です(function-t.com/arxia.co.jp)。
- Q. 口腔機能実地指導料(46点)を算定するには何が必要ですか?
- 研修を受けた歯科衛生士の1名以上配置、主治歯科医師の指示に基づくDHの指導実施と文書提供、指導実施時間とユニットの確保、DHの処遇改善取組が施設基準・算定要件です。研修要件には2027年5月31日までの経過措置があります。C001-7や歯科口腔リハビリテーション料3との併算定不可にも注意してください。
この記事の詳細は Bench Club 限定レポートで
令和8年度歯科診療報酬改定 ポイント解説
令和8年度(2026年度)歯科診療報酬改定の全体像を解説した資料。施行日は6月1日で本体改定率は+3.09%。初再診料引き上げ・歯科外来物価対応料・ベースアップ評価料など収入の土台が増える項目と、医科歯科連携・口腔機能管理・デジタル系の新設項目が特徴。一方で歯科疾患管理料や少数歯SPT、大人数訪問は減点となる。最重要タスクは再届出が必要な施設基準の漏れなき提出であり、届出状況によって医院ごとの増収幅が大きく異なる構造となっている。
Bench Club で続きを読む →参考資料
- 令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】(厚生労働省保険局医療課)
- 令和6年度診療報酬改定の概要【歯科】(厚生労働省保険局医療課)
- 「口管強」は改定でどう変わる?|IOCiL
- 令和8年度改定で新設!口腔機能実地指導料とは?|IOCiL
- 歯科疾患管理料の統一と歯周病継続支援治療|dental-web.jp
- 2026年度改定の要点〈歯科〉|兵庫県保険医協会
- 歯科診療報酬改定情報10|愛知県保険医協会
- 2026年度歯科診療報酬改定 完全ガイド|function-t.com
- 口腔機能管理料2026年改定|arxia.co.jp
- パート・時短×シフト最適化でチェア稼働を考える組織設計術
- 小児の口腔機能発達不全症――保険診療と自由診療の区分実務ガイド
- スタッフ主導カイゼン会議設計術
- 令和8年度歯科診療報酬改定 ポイント解説Bench Club 会員限定Bench Club で続きを読む →


